パラ冬季種目(クロスカントリースキー)のアスリートをサポートするために、昨日(6/27)までの7日間、北海道での合宿に帯同してきました。
冬季の雪上競技が夏場(雪の季節以外)にどんな練習やトレーニングをするの?と不思議に思う方も多いかと思います。
夏場のクロカンスキーの練習用具
夏場でも、スキーの練習をします、ローラースキーという道具を使って。

このように車輪の付いた道具で、路上でスキーの練習をします。

ローラー練習はコーチングスタッフの安全管理のもと、細心の注意を払って実施されます。

下肢障害などで座位でスキーをおこなうアスリートは、冬場にも使用するシットにローラースキーを装着して練習を行います。

スキー以外の練習
ローラースキーを滑る以外にも、雪上シーズンではなかなか行いにくい(夏場にしか行えない)トレーニングなども行います。
- 登山やトレイルランニングなどを(立位選手)
- ウェイトトレーニングなどでスキー動作向上のための筋力強化
- それぞれの身体的課題に応じた対応(修正エクササイズ実施など)
上肢障害などで立位で競技するアスリートは、登山やトレランなどを通じて、基礎的な身体能力(筋力や心肺機能など)の向上を狙っての練習もします。
またどの障害カテゴリーの選手にとっても、ウェイトトレーニングはクロカンスキー競技においてとても重要になってくるので、夏場もスキーシーズンも継続して行っていきます。ですので、実は夏場でも、というか夏場こそ、やるべきことは山積みなのです。
トレーナーの仕事内容(コンディショニングサポート)
私のようなトレーナーがパラアスリートの合宿に帯同して、コンディショニングサポートとしてどんなことをしているのか。大まかに言うと、アスリートが日々のトレーニングを支障なく円滑に行えるようにサポートしていくこと、いくつか具体的に挙げてみると、
- 練習(屋外や室内など)での安全管理
- 疲労回復やけがの治療などのためのケア(マッサージや鍼など)
- 個々の身体的課題に応じたトレーニングの提案および実施のサポート
安全な練習遂行のため、用具の故障の有無や路面や路肩の状態を確認したり、交通状況での注意を選手に声掛けしたり、飲料や補給食の管理など、安全管理全般をコーチたちと共に実施します。
トレーナーの仕事として多くの皆さんにすぐに想像してもらえるのは、ケアの部分かと思います。私の場合は鍼灸マッサージ師の資格を活かして、それらの技術を用いて、アスリートの痛みの緩和や疲労回復の補助を行います

マッサージ(上の写真)や鍼(下の写真)を用いてのケアサポートの例

個々の身体的課題に応じたトレーニングの提案や実施のサポート
先にも述べたように、障害の種類や度合いはパラアスリート個々で異なり、また競技や日常生活をスムーズにおこなっていくための身体的な課題も人それぞれなので、個々の状態に応じて補強や修正のためにエクササイズをおこなうこともあります。
特に脊髄の障害や脚の切断などで下肢がうまく使えないアスリートたちにおいては、うまく使える体の機能がどれくらい残っているかで、可能になる動作が大きく異なってくるので、それらを見極めて個人の課題に対してアプローチしていきます。
具体例を少し挙げると、脊髄の障害で体幹部の筋肉がうまく使えない選手の場合、ポールをプッシュして地面に強くエネルギーを伝える際に、動作を安定させることが少し難しい場合があります。
①体幹機能が多く残っているシットスキー選手の連続動作

②体幹機能があまり残存していないシットスキー選手の連続動作

体幹の機能があまり残存していないアスリートのほうが、上肢で強いプッシュ動作をかけるときに、少し上半身が前かがみ気味に倒れてしまう傾向にあります。

(体幹(下腹部周辺)のコントロールが少し難しく、骨盤や体幹の前傾が多めに出る傾向)
身体機能のサポートに介入していくエクササイズの例
このアスリートが、より安定した姿勢で効率よく上半身の力を地面に伝えようとする場合、体幹部を少しでも安定させる必要が生じてくるので、体の機能を少しでもうまく使えるように補強や修正を目的としたエクササイズ実施で、サポートに介入していく場合があります。
下腹部の筋の機能が少し残存している場合は、下のような座位で骨盤をコントロールするエクササイズをおこなうことがあります(下の写真)。

また、座位姿勢で上半身だけで競技をするアスリートにとって、胸まわり(胸郭や胸椎など)を大きく柔らかく力強く使えるかどうかは、競技力の生命線になってくることが多いので、胸郭の可動性を向上させるエクササイズをおこなうこともあります(下の写真)。

他にもいろいろな観点から、介入に用いるエクササイズを選択して、アスリートに提案し実施を手助けし、アスリート本人の感覚やその後の動作の変化具合をみながら、より効果的なサポートを継続していく。
というのが、身体機能の課題に対して、エクササイズを用いて補強や修正に介入していく、という一つの事例です。
エクササイズはトップアスリートだけに効果的なわけではない
このように身体機能をこまかくチェックして、動作の改善や痛みの緩和をおこなっていく手法は、なにもトップアスリートやパラアスリートだけのためのものではありません。
マラソンやトライアスロンやフットサルなどを頑張る一般のアスリートさんや、特に運動はしないけど痛みを抱えながら仕事や家事をしている方がたにこそ、このような介入サポートは効果的です。
痛みや張り感に対して、マッサージで揉みほぐすことが有効な場合もありますが、それだけでは痛みを一時的に緩和することは出来ても、すぐにぶり返したり治療効果が定着しないというのはよくあることです。こういった症例に対して、体の使い方そのものを改善していき、より健康的に大きくスムーズに動くことを体が少しずつ習得していくと、痛みを生じさせにくい体に変わっていくことがあります。
なかなか怪我が治らず、痛みを抱えながらスポーツや日常生活を送っているという悩みを抱えた方に対して、様々な角度からアプローチできるアスレティックトレーナー(兼はり灸マッサージ師)は、とても有効なお手伝いが出来る可能性があります。お気軽のご相談ください。
釈迦のパーソナルスポーツケアでは、杉並区の荻窪、上荻にて、主にスポーツにまつわる様々な痛みや不調のお悩みの解決、大切なレースや試合などへのコンディション調整のサポートを行っております。お気軽にお問い合わせください。